特別受益とは?相続人間の不公平感を解消する制度
相続人が贈与や遺贈を受けたときに、他の相続人との不公平感を解消するために、相続分から差し引く制度として「特別受益の持ち戻し」というものがあります。
被相続人(亡くなった方)の死亡後は、共同相続人間で法定相続分に従って、遺産を相続するのが原則です。
ところが、共同相続人のうち、被相続人からの遺贈や結婚時の持参金などの名目で、被相続人の生前に贈与を受けた相続人がいた場合、それらの贈与を全く考慮せずに遺産分割することは、共同相続人間の公平を害することに繋がります。
そこで、生前贈与などの特別受益を受けた相続人がいる場合は、特別受益分を考慮して計算し、「被相続人が死亡時に有していた財産の価値」に、「生前贈与などされた(特別受益分の)財産の価値」を加えたものを「相続財産」とみなします。
✓ 計算方法 ☞ 死亡時の財産価値+特別受益分の財産価値=相続財産
上記のように計算した「相続財産」に「法定相続分」をかけて算出した価値から、「特別受益分の価値」を差し引いた金額を、特別受益を受けた相続人の相続分とするわけです。
✓ 計算方法 ☞ (再計算した相続財産×法定相続分の割合)-特別受益分の財産価値=特別受益を受けた相続人の相続分
要するに、相続人の中でたくさん財産をもらったひとは、まずもらった分を戻させたうえで、新たに相続分を計算し、そこから既にもらった分を差し引き、残りの財産を相続させるということです。なお、贈与・遺贈が相続分よりも多い場合は、返還を請求することはできません。
特別受益に含まれるもの
遺贈については、どのような遺贈かに関わらず全て特別受益に該当します。
これに対し、生前贈与は生計の資本としての費用のみが特別受益に該当します。具体例は次の通りです。
- 持参金
- 新居
- 道具類
- 高額の結納
- 高額の新婚旅行費用など婚姻のための贈与
- 養子縁組のための費用
- 高等教育の学費
- 営業用車両の購入資金
etc...
特別受益に該当しないとされるもの
ただし、結婚式にかかった費用は原則として特別受益に該当しないと考えられています。
学費に関しても、1人だけに高等教育を受けさせる場合は特別受益になるものの、大学進学率が高い現在の状況下では、一般的に(特別に高額な場合を除き)大学の学士程度であれば特別受益に該当しないと考えられています。
特別受益の計算方法
生前贈与が特別受益に該当する場合、現金であれば貨幣変動を考慮したうえで相続開始時の貨幣価値で計算します。
土地や株式は贈与を受けた後に売却したとしても、現物があるものとして相続開始時の評価額・株価で計算します。
特別受益の持ち戻し免除
特別受益に該当するとされても、被相続人が「持ち戻し」を免除した場合は、持ち戻さなくてもよいとされています。
しかし、持ち戻し免除の意思を書面で明確に示していることは、極めてレアなケースでしょう。ですので、「黙示の持ち戻し免除の意思表示がある」といえるための認定基準が問題になってきます。
この認定にあたっては、贈与した経緯、趣旨、その他被相続人が受贈者から利益を得ていたかどうかなどを総合的に考慮して、黙示の意思表示を認定します。
持ち戻し免除の意思表示が遺留分を侵害する場合であっても、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)がなければ、遺留分を侵害する持ち戻し免除も有効です。
ただし、遺留分減殺請求(遺留分侵害額請求)がある場合は、これを持ち戻して遺留分の算定をすることになり、その限度で持ち戻し免除が無効となります。
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